Episode 3

「それって本当に無理なのかな…?」
疑問を持つことが人生を変える

「足の速さは才能だから、お前が今以上速くなるのは不可能だ」

こういう言葉を僕は、足の速さを追求する過程で何度も言われ続けてきた。

 

足が速くなることは子どものころから望んできたことなのに、学校でも一度も教わったことはなかった。だから、本当に方法はないのかもしれないと思った。

 

一方で、素朴な疑問もあった。

 

(本当に、方法がないと言い切れるのかな…?もしかしたら、皆が知らないだけで速くなるための方法は存在するんじゃないか…?)

 

今では当然のように言われている「地動説」だって、異端扱いを受けたコペルニクスやガリレオ・ガリレイのような常識を疑って研究した人たちがいたからこそ新しいスタンダードになった考え方だ。

 

(だったら、走りの常識だってもしかすると覆せるんじゃないか…?)

 

純粋に諦めたくない気持ちも大きかったけれど、そんなふうに心のどこかで可能性を信じている自分もいた。

 

だから僕はわずかな可能性に賭け、より速く走る方法を探し続けた。

 

世界一の短距離選手が在籍するジャマイカの陸上チームでその答えを見つけたときは、言葉にならないほどの感動がこみ上げてきた。

 

「ケンイチ、お前の走り方はマラソンランナーの走り方、つまりランニングだ。なぜ、スプリントをしない?ボルトの走り方をみてみろ」

 

ウサイン・ボルトさんを世界一に導いたジャマイカのコーチは、僕が求めていた答えをさらりと教えてくれた。まるで、僕がそれを知らないことが疑問であるかのように。

 

彼の一言に僕は、目を輝かせて聞いた。

 

「ボクはいま26歳で、100mのタイムは11秒台だ。日本では、誰に聞いても今から速くなることは無理だといわれた。でもスプリントのテクニックをボクが手に入れたら、10秒台で走ることはできるのかな?」

 

「もちろん出来るさ。逆に無理な理由はどこにあるんだ?」

 

自信に満ちたコーチの言葉は、僕の希望を確信に変えてくれた。

 

(足が速くなる方法、本当にあったんだ…!僕も、もっと速くなれるんだ…!)

 

そう思うと、めちゃくちゃ心がワクワクした。
ジャマイカでの特訓を経て、100mのタイムがちょうど1秒縮んだ。

 

「走り」に関して、日本ではスプリント走法の説明や理論が言葉として完全に落とし込まれておらず、それが原因で足の速さを諦めている人が僕以外にも沢山いるように感じられた。

 

だから僕は、日本に「走り」の常識をアップデートしたくて、走り革命理論を開発した。
沢山の人にこの理論を伝え、自分自身の可能性をもっともっと信じていけるような成功体験を積んでほしくて、走りの学校を創った。
「足の速さは才能だと思ってあきらめていた」というスポーツ選手たちも沢山いることが分かってきた。
「走り」は、子どもから大人、スポーツ選手からそうでない人たちまで、誰しもに関わることだ。

一人でも多くの人たちがその「走り」を通して自信を持てるように、僕は走りの学校を創った。

でも、僕が伝えていきたいのは「走り」のことだけではない。
走りの学校に入学してくれた君に夢があるなら、もしくは君がこれから自分の夢を見つけた時、その夢を大切に育んでいってほしい。
「あなたには無理だよ」と周りに言われても鵜呑みにして諦めず、

 

「本当に無理なのかな?」

 

と、自分自身の頭や心で考え尽くすクセを身につけてほしいんだ。

 

不可能と言われることの中には、本当に実現できないこともあるだろう。
でも、正確な努力を続けていくことで達成されることだって確かにあるんだ。
僕にとってその一つが「走り」だった。

 

走りの学校のカリキュラムや交流。
君自身による「走り」の試行錯誤。

 

それらを通して君は、常識を疑うマインドや諦めない心を培い、適切な努力を積み重ねていくことになる。

身につけた一つ一つの力が、走りだけではなく人生の様々な面で君の力になっていく。
僕は君に、そのことを約束する。

君自身に眠る力を引き出し、一緒に高めていこう。

 

和田賢一