Episode 10

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今は苦手なことだって
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もともと僕は、人前で話すことや自分を表現することがものすごく苦手だった。

国語の音読ではよく、緊張で言葉がとぎれとぎれになってしまったんだ。

自分に自信がなくて、人からどう思われるかが怖かったんだと思う。

大学生になっても、話すことへの苦手意識は根強かった。

特に、異性の扱いに戸惑いを覚えた。

ほとんど男子校と言っても過言ではない体育会系の環境に、長期間身を置いていたからだ。

そんな僕にとってこの頃に出会う女性は未知なる存在で、トレーナーとしてどんな接し方をすればいいのかとても悩んだ。

 

社会人になると、ジムのお客さんとより一層深く関わっていくことが求められた。

僕はグループのお客さんのトレーニングを担当していたから、かなりの頻度でお客さんたちの前で話したり体の動きを実演したりした。

 

「1,2,3,4、5,6,8!1,2,3,5,6,7,8!すみません、番号飛ばしました!」

 

レッスンで拍子をとるとき、なぜか僕は4拍目と7拍目を抜かしがちだった。

謝る僕を、お客さんたちは笑って温かい目で見守ってくれた。

 

経験を重ねるにつれて、人前で話すことに免疫ができていった。

 

僕の考え方・感じ方を理解してくれる人との出会いや、気持ち一つで話して相手に英語が伝わった海外経験も、自信につながっていった。過去の成功体験は紛れもなく、新しい成功体験の追い風となってくれたんだ。

 

ビーチフラッグスアスリートとして、そしてライフセーバーとしての経験を積んだ僕はやがて、自分自身の人生や思いを発信していくようになる。

 

TEDxKyotoというイベントでは、15分間のスピーチを半年かけて磨いていった。特にロジカルな文章や伝え方が苦手だった僕は20~30回は原稿を修正し続けた。

その後のリハーサルでは、今まで意識をしてこなかった間=沈黙の時間をとることを徹底的に身体にしみこませた。

 

修正に修正を重ねて、僕の経験や思いは、イメージしていたよりも遥かに磨かれた文章でわかりやすく表現されていった。

間をとるときに、お客さんたちの表情がよく見えた。お客さんたちのリアクションにより話のテンポや間の長さを変えることで、今までにないくらい、自分の言葉が相手に届いた実感があった。

 

人前で話すことや自分を表現することが極端に苦手だった僕は、文章の磨き方や話し方を突き詰めて習得していったことで、それらに対して自信がつけることができた。

 

苦手が得意になる経験をしたことがあるのは、僕に限ったことではない。

 

「子どものころから足が速かった?」

 

ジャマイカの陸上チームで、選手一人ひとりにたずねた。

すると驚いたことに、彼らの約半数はNoと答えたんだ。

 

「むしろ、子どもの頃は足の速さに自信なかったよ」

 

と答える選手も少なくなかった。

 

Noと答えた選手は、能力や自信があったから努力をし続けてきたわけじゃない。

それらがなくても、自分の可能性を信じたかったから練習を積み重ねられたんだ。

 

自信がなくたって、無理だと言われたって笑われたって、未来のことは誰にも分からない。

だったら、悲観して終わってしまうのはもったいない。

最高の未来に旗を立て、そこをめがけて全力で走っていこう。

和田賢一
 

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